西洋占星術の4大エレメント
西洋占星術(以下、占星術)では、黄道12星座を4つに分ける、4区分と言う分け方があります。それぞれ自然界のエレメントを割り当て、火のエレメント、地のエレメント、風のエレメント、水のエレメントの4つで構成されています。牡羊座は火、牡牛座は地、双子座は風、蟹座は水、と言うように12星座をぐるりと順番になっています。
ちなみに、○○座と書きましたが、○○座と言うのは空の星々が作る星座のことで、占星術で使う同じ名前のものとは位置が違っています。「牡羊座生まれ」と言われる人は、牡羊座の下で生まれた訳ではありません。占星術では春分の位置を起点として30度ずつに12分割されており、この時代の春分の位置は牡羊座から始まっていないのです。そんな訳で、実際の星座と占星術で使う名前を区別する為に、占星術の時はサインと言う名前を使います。海外では、signsと表記が定着しているのですが、日本ではなかなかその区別がされていません。私自身は○○座と使うと何だかモヤモヤするので、「○○サイン」と書くようにしています。冒頭で○○座と書きましたが、以後サインと使っていきます。
さて、話を元に戻しますね。占星術では、4大エレメントである、火・地・風・水があるわけですが、実はこれらはユングのタイプ論と関連付けられることができるのです。心理学に興味のある方ならユングはご存じの方は多いかと思います。無意識を発見したのはフロイトで、その弟子だったユングは無意識の見解の違いからフロイトと袂を分かち、その後、独自に無意識の領域を探る方法を明らかにしていきました。
そのユングの「タイプ論」と言う著書があります。これは無意識でなく、意識世界を4つの機能に分けたものですが、これが占星術の4大エレメントの性質とものすごく合致するのです。ユングは占星術を知っていたのかもしれませんね(そう言う話もありますが、どこに書いてあったか忘れました)。
宇宙、そして現象世界は、火・地・風・水の4つの元素で構成されているという考えは、古代ギリシャ哲学を源としています。この4元素と人間の気質とを関連付ける考え方は、占星術のみならず、中世の医学で実際に診断に使われていた4体液論(多血質・胆汁質・憂鬱質・粘着質)などがあります。そして、占星術でいう4元素は、後にユングが著書『タイプ論』の中で述べた、直観・感覚・思考・感情という人間の心の機能(はたらき)と非常に類似しています。
心理占星学入門/岡本翔子
4大エレメントとタイプ論
タイプ論
さて、以下は二つの著書からのタイプ論についての抜粋です。
Intuition 直観機能-五感ではとらえられない総合的な直観力で判断する働き。
Sensation 感覚機能-現実に存在するものを五感でとらえ、快・不快で判断する働き。
Thinking 思考機能-情感よりも論理を重んじ、合理的に頭で割りって考える働き。
Feeling 感情機能-論理よりも情感を重んじ、好きか嫌いかで判断する働き。
心理占星学入門/岡本翔子より
ユングはこれを四つの根本機能、すなわち、思考(thinking)、感情(feeling)、感覚(sensation)、直観(intuition)に区別して考えた。
ユング心理学入門/河合隼雄より
占星術を学んでいらっしゃる方であれば、どれがどのエレメントに結び付けられるかピンと来ているかもしれませんね。
4大エレメントの関連付け
答えは、直観機能が火、感覚機能が地、思考機能が風、感情機能が水、です。私としては、直観機能が割と悩ましく思えました。思考機能や感情機能なんかは、エレメントの性質として説明されるキーワードそのものですが、直観機能に関しては、水のエレメントは直観や感性があると習ったからです。
私の理解では、水エレメントの直観もありますが、火のエレメントのそれとは異なります。火のエレメントは直感を得て自らの行動として動きますが、水のエレメントはそれを感じたり、共感を呼び寄せるように使うように働くように思います。
シャドウ
あるエレメントが強いと、他のエレメントが弱くなります。優勢になった機能の裏には、抑圧された裏側の機能が存在しています。シャドウの関係は、火のエレメントに対しては地のエレメント、水のエレメントに対しては風のエレメント、と言う具合になります。
優勢な機能の裏には、ひょっとすると表現されていない抑圧された心理があり、未熟なままになっている可能性があります。それらは他者に投影されて、本人が触れられたくない思いになるかもしれません。未熟な機能は、突然不自然な形で発揮されることがあります。また、まったく欠損している場合には、過剰保障として表れることがあります。
直感機能・感覚機能・思考機能・感情機能
以下にそれぞれに機能について、解説します。自分がどの機能が一番強いのかは、ご自身のホロスコープから惑星が一番多いものになります。ですが、トランスサタニアン(天王星・海王星・冥王星)だけで数が多い場合は、他の惑星が置かれている箇所を見た方が良いかもしれません。数が均等になったり、ホロスコープの見方が分からない場合は、まずは太陽と月で見てくださいね。
直観機能・火のエレメント(牡羊サイン・獅子サイン・射手サイン)
火は燃えだすと一気に周囲を焼き尽くす勢いがあります。勢いの良さ、情熱、潔さなどを象徴します。勇気、生命の源でもあるので、火が強いとエネルギッシュで、自己主張も強くなります。怒りや感情を爆発させることもありますが、後を引くことなく根に持たないので終わったらさっぱりしていることでしょう。
シャドウとなるのが、地のエレメントになります。火のエレメントが強いと、現実や事実にはあまり目を向けず、常に新しい未来、可能性に目を向けています。だからこそ新天地へ向かう力があり、まったく知らない世界にも飛び込んでいけると言えます。ですが、現実に目を向けないことは、自身の体をおろそかにして酷使しすぎても気付かなかったり、事実からの訴えを無視してしまうことによって、問題をこじらせてしまうことがあります。
火が燃えるのには、物質がないと燃えないのです。強い火を生み出す為には、感覚機能を磨いていくことが必要です。
感覚機能・地のエレメント(牡牛サイン・乙女サイン・山羊サイン)
この世の形あるものを示し、堅実で実際的であり、確実であることを求めます。経験したこと、実際に起きたこと、それらを分析する能力を備えます。暮らしやボディを心地良くしようとします。すべて、五感に基づいているので、目で見ること、触ること、聞くことなどが重要になってきます。不確かな可能性を信じるより、実際に行われていること、社会的に認められていること、結果として表れているやり方を好みます。
シャドウとなるのは火のエレメント。地のエレメントが強いと、新しいものを作り出すよりも、これまでのやり方を真似る、成功した例をなぞる、そこからコツコツ努力していくのが得意です。ですが、あまりに感覚に固執してしまうと、過去に覚えた感覚の世界から、外に飛び出すことが出来ず、臆病なまま過ごしてしまうことになります。ただ日々の義務をこなす、定型化されたタスクをこなしますが、次第に効率化を求めマンネリ化し、情熱ややる気などが失われていきます。火の要素が無くなると、ガソリンが入っていない車の様であり、徐々に動きが鈍っていき、次第に憂鬱気質を招くでしょう。
物事を動かすためには、動力が必要であり、それには情熱ややる気や気力など、目に見えないけれどそこに込めていく思いを沸き立たせていく必要あるのです。
思考機能・風のエレメント(双子サイン・天秤サイン・水瓶サイン)
言葉は、声を出し伝えます。言葉は音が無いと生まれません。音があり、言葉が出来ると、それらを繋ぎ合わせ会話が生まれ、思考が生まれます。風エレメントが示すのは、思考、連絡、知識などになります。風は世界のあらゆるところを駆け巡るので、その全体性を捉えようとする視点から、客観性、論理性などの能力ともなります。知ることや考えることが好きであり楽しいと思える人達です。その時々の気分や感情に流されることなく、物事を客観的に捉えようとするので、あっさりしていたり、冷淡と見えることもあるでしょう。
風のエレメントのシャドウは水エレメントになるので、感情や情感の交流がシャドウとなる側面となってきます。あまりに知識重視となったり、あらゆるものを比較検討しているうちに、本来の自分の感情を蔑ろにして、好きなのか嫌いなのかもわからなくなってしまうことがあります。また、周囲の気持ちを考えることなく、場や状況にそぐわない多くの知識を持ち出して、相手を怒らせてしまうこともあるでしょう。
言葉や知識を伝えるには、感情や気持ちや相手の状況を思いやる心が大切です。そうすることで、単なる記号的な情報だったものが、相手にとって必要な情報となって心に届くでしょう。
感情機能・水のエレメント(蟹サイン・蠍サイン・魚サイン)
水は流動的で、どこにでも侵入していきます。風が地上を自由に動くのだとすれば、水は地に沿い、地下にまで潜ります。また、器を変えれば、別の器にも入ることが出来、その形を変えることが出来ます。雲や霧の様な形をとることもできます。人の感情や情感、その場のムードやフィーリングなどを象徴します。感受性が豊かで、人の気持ちを察し、思いやり寄り添うことが出来ます。個人的な人間関係を大切にします。好き嫌いもはっきりしています。自分の好みで判断しすぎたり、感情に溺れたりして、客観性を失ってしまい、関係を破壊してしまう強さもあります。
水のエレメントのシャドウは、風のエレメントです。水のエレメントが強いと、感性を生かした表現、愛を伝え、思いやりを持って人と接しますが、好き嫌いが激しい故に、身内びいきをしすぎたり、秘密や内緒を作りすぎたりも。また、たまたま得た本やテレビなどの情報をそのまま受け売りし、こじつけて議論を終わらせ、自分の世界に籠ってしまうと言う常套手段を取ってしまうことがあります。そうなると、他者との関係が破綻してしまうでしょう。新しいことを寄せ付けないふるまいを続けていると、留まる水は腐敗していきます。
選択や判断にはある程度の調査や知識が必要であり、自分以外のものの見方があることを知ることが大切です。それによって、自分の望みを得やすくなるでしょう。
参考にした書籍
こちら記事で参考にした書籍です。
完全版 心理占星学入門/岡本翔子
占星術の基礎知識であるエレメントの解説から、サイン、ハウス、アスペクトなどの解説があります。また、ページ数は少ないですが、カイロンについての解説があります。私がカイロンを初めて知ったのもこちらの書籍でした。初めてカイロンについて読んだ時に、自分のこれまで言葉に出来なかったことをようやく知りえたと思えました。占星術初心者~中級者でも気軽に読めて、自分に関係するところだけ読んでも、十分に楽しめると思います。
ユング心理学入門/河合隼雄
心理占星術を学ぶのであれば、是非一冊はユングの本を読んでおいた方が良いかと思います。心理占星術では、コンプレックス、ペルソナやアニマ・アニムスなども扱いますが、一般的に出回っている意味とは、若干異なることもあります。これらの言葉の正しい意味を知らないまま心理占星術を学んでしまうと、間違った解釈のまま覚えてしまうからです。
私は故・河合隼雄先生の著書が好きで、ユングについて知りたい時にも購入しました。心理学入門とありますが、内容はかなり充実しています。コンプレックス、アニマ・アニムス、ペルソナなどの説明もあります。
入門とは言え、初めての方は結構重厚で難解と感じる本かもしれません。久々に手に取ったらそう感じました^^;。最近の入門と言われる本は、イラストも多く読みやすく、その分内容が絞られている印象がありますが、昔は入門と言えども文章ぎっしりで読みごたえがあります。改めて読んで今だからわかることもありました。引っ越しでも捨てられなかった本。手元に置いておきたいです。