星と人☆ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

ちょっと前になりますが、友達が歌うと言うことで第九を聴きに行きました。やはり第九良いですね~。素晴らしかったです。私も第九を歌ったことがありますが、歌うたびに第九の素晴らしさを実感します。

この第九を作ったのは、言わずと知れたベートーヴェンです。クラシック音楽に詳しくなくても、学校でももちろん学ぶし、学校以外でもきっとどこかで彼の音楽を聴いたことがあるかとおもいます。ドラマや映画やコマーシャルでも流れています。

そんなベートーヴェンのことを知りたくて、何冊か本を読みました。ベートーヴェンの伝記として有名なのは、ロマン・ロランによるものが一般的に知れ渡っているベートーヴェン像なようです。私もそこから派生した本を何冊か読み、かなりの偏屈、変人な人物として描写されていて、やはり天才と言うのはそこまで変わり者なんだと思っていました。しかし、今回青木やよひ氏の「ベートーヴェンの生涯」を読んでこれまでの見方がだいぶ変わりました。

ロマン・ロランの著書は、ベートーヴェンの晩年の方で最後に秘書役をしていたアントン・シントラーの著書からのことが多いそうです。青木氏によると、このシントラーはかなりの野心家であり、自分を良く見せる為に都合の悪い箇所はベートーヴェンの会話記録を破棄や改ざんなどもしました。自分の方が正しいと思わせる為に、ベートーヴェンと親しかった者達を悪く言うこともあったそうです。

ロマン・ロランの著書は、ベートーヴェンの不器用さが不憫で泣けるし、ドラマとしては面白いものですが、青木氏の著書を読んで、ベートーヴェンの見方が変わり、ベートーヴェンを人間として理解できるのではないかと思い始めました。

青木氏の著書は多くの資料確認に基づいています。そして、そこから浮かび上がるベートーヴェン像がとてもリアルで自然でした。天才で変人と言われるベートーヴェンですが、そんな極端な性格だけではなく、もっと一人の人間として普通の一面が見えるところなども共感出来ました。

ベートヴェンの出生チャート

出生チャート

ベートーヴェンの出生日は1770年12月16日と言われています。出生時刻は不明です。1770年12月16日に生まれ、教会の洗礼を受けたのが12月17日だそうです。

このチャートを見て、「この人は天才だ!」なんて見抜く自信はありません^^;。チャートはあくまでエネルギーの傾向。人の人生は、時だけでなく、環境、関わる人々、時代にも大きく影響を受けていくからです。

トランスサタニアンのグランドトライン

チャートの中でパッと目に付くのは、精神的な高みを目指そうとする太陽水星月のコンジャンクション。

そして、冥王星、天王星、海王星とトランスサタニアンのグランドトラインと言うハーモーニーが完成しています。まだこの時には発見されていないトランスサタニアンの星々によるグランドトライン。周期の長いトランスサタニアンのグランドトラインなので、時代を先取りするような才能を発揮することになり、それは先の時代まで人々に長く影響し続けるものになると言えるでしょう。

時代の大きな渦が巻き起こり、人々はその渦に巻き込まれていく様な背景が想像できます。実際に、ベートーヴェンの生きた時代は、フランス革命が起き、ナポレオンが生きた時代であり、町は軍の砲撃を受けた様な時代です。破壊と再生の冥王星、新しい価値観を植え付ける天王星、人々の心に残る芸術性が全て組み合わさり、時代の変革と波が押し寄せていました。

昼生まれか夜生まれか

ベートーヴェンの出生時刻はわかりません。レクティファイは行いませんが、幼少時代の様子から考えてみたいと思います。ベートーヴェンは幼い頃に宮廷音楽家の父親に才能を見出され、厳しい稽古をさせられました。父親には天才を誇張させる為に、実際より低い年齢で演奏会に出させられるようなこともありました。このように、早くから社会に引っ張り出され、外部の環境に振り回されることが多かった少年時代で、南半球的に天体が集中する性質と重なります。なので、昼生まれな気がします。

ネットで検索していると、午前生まれでホロスコープを出しているのも見つけましたが、出典はなかったので、レクティファイなどによる独自の算出でしょうか。ベートーヴェンは才能豊かであり、人と関わらずに引き籠っていた印象があることから、午前生まれという可能性もあります。

ロマン・ロランの伝記だけ読んでいたらその様に考えるのですが、今回参考にさせていただいた青木やよひ氏の著書「ベートヴェンの生涯」によると、一人でピアノを弾くことが好きでありながらも、かなり環境からの影響を受け、周囲の人との関り、良い師との出会いなどもあり、関わった人間も多くいることがわかります。外に引っ張り出されると言うこと、教育や教師、幼いうちから演奏会に出演、と言う辺りは、ハウス的には9ハウスや10ハウス辺りの強さを感じます。

新月生まれ

午前生まれ、午後生まれにせよ、月は射手になります。太陽も射手であり、新月生まれです。

射手の月は「主張したい」と言う欲求が根底にあります。月は太陽の影響の後ろに隠れるので、太陽の性質がストレートに出てきて、月の湿っぽさはあまりありません。射手太陽の自由を求め楽天的で冒険家の一面が前面に出やすいと言えるでしょう。太陽と月の近くには水星もあり、その真向かいには双子の火星。直情的で、カッとなりやすい一面、でも悪いと思ったら自分の非を認め謝罪する潔さは、まさに火の射手の性質と言えるでしょう。

ベートーヴェンの一生は、ずっと走り続けている様です。多くの著名人との関わり、あちこちでの演奏会、旅など、目まぐるしい人生の中で、よくあれだけの素晴らしい作品を世に生み出したなあと思いました。作品を作る時は引き籠っていることも多かったみたいですが、ベートーヴェンにとっては内なる炎を外側に表出していくアクティブな活動にも思えます。

エレメント

ベートヴェンのホロスコープでは、火のサインと地のサインが優勢。風のサインは火星のみ、水のサインはありません。火と地のエレメントも射手サインから山羊サインの間に集中しています。とても野心家であることがわかります。水のエレメントが無いことから、周囲の人達と繊細な気持ちのやり取りをするより、高く掲げた理想を話し合ったり、熱い議論をしたりする方が得意だったでしょう。

射手と山羊が多いので、柔軟サインと活動サインが多くなります。不動サインには土星と天王星のみ。同じことをずっとやるより、新しいものを次々生み出していく力があります。音楽家としても、クリエイティブさを活かし、新しいことを次々生み出したからこそ一つの道を歩き続けられたのでしょう。

引っ越魔で同じところにずっと住み続けることはなかったのはすごく頷けます。環境を変えることで、刺激と新鮮さのエネルギーを自分の中に取り入れていたのかもしれません。

アスペクト

射手の月・水星・太陽、火星は、海王星を頂点としたTスクエアを取っています。さらに、冥王星、天王星、海王星がグランドトラインとなっています。この三角形のエネルギーは芸術の海王星から個人天体に流れることになります。海王星と月・水星・太陽とのスクエア、海王星と火星とのスクエア、Tスクエアが形成され、ここに情熱的で繊細な優れた芸術的感性が見られます。

父親との関係

ベートーヴェンが生まれた家は、祖父の時代から選帝侯に宮廷音楽家として仕えていました。祖父は宮廷学長になる名誉ある偉大な人物であり、その長男(ベートヴェンの父親)も宮廷音楽家として真面目に仕えていたそうです。ですが、祖父が亡くなりその後ろ盾を無くしたあたりから、少しずつお酒に依存し下り坂の人生を送るようになります。

ベートーヴェンの父親像は、太陽とそれに関わる惑星から読み取ります。まず、太陽と海王星がスクエア。海王星はアルコールや依存を示しているので、まさにと言う感じです。太陽は土星とトラインを形成しています。自我の形成において、混乱や混沌とした環境に置かれていたことが読み取れ、父親の背中を当てに出来ないと言う感じです。ただ、土星からの太陽へのトラインは、混沌とした中から、社会との繋がりを促してくれ、現実世界に道を与えてくれることになります。祖父の影響をより強く受けたとも言えます。

父親の影響はベートーヴェンにとっては反面教師としてはたらくことになり、彼自身はアルコール依存症になることはなく、18歳の頃早くに父親の代わりとして家長の役割を担うべく、宮廷に嘆願書を出す程の責任感を見せます。ベートーヴェンにとって、海王星はアルコールでなく、音楽こそが陶酔や没頭を与えてくれるものになったのでしょう。父親によって音楽の才能を見出されることがなかったら、アルコールに耽溺していてもおかしくないようなチャートです。

ベートヴェンの人生とホロスコープ

ベートーヴェンにとって重要な出来事を年代順に追って、ホロスコープと照らし合わせてみます。ベートーヴェンはとても目まぐるしい生き方をしていて、毎年毎年が何かしらの重要な作品作り、重要な公演、著名な人物との出会い、大切な友人や師匠の出会いなどがあります。全てが活発過ぎて、どの年代をピックアップするのがとても難しかったです。

ベートヴェンについてもっと詳しい方や音楽に通じている方は、他のもっと重要な曲が作られた時などを知りたい、取り上げるべきと思うこともあるでしょう。私自身ももっと取り上げたい年代もあるのですが、大変なので転機になっていそうなところをピックアップしてみました。こちらの記事は、また折を見てアップデートするかもしれません。

8歳 デビュー

まず、8歳の頃のケルンの音楽祭。

このデビューは実際には時期や場所などの要因から失敗に終わったそうですが、ベートーヴェンにとっては自立と父親からの解放と自由を得るきっかけになったようです。ベートーヴェンは即興音楽が大好きだったのですが、父親から厳しい指導を受け、時には殴られたり地下室に閉じ込められたりしていたそうです。

その為、この音楽祭が失敗したおかげで、父親は息子を自分の手から離し、宮廷の同僚や音楽仲間に息子を委ねることになります。それによって、ベートーヴェンの音楽がより開花する良い環境を手に入れることになります。

ホロスコープを見ると、トランシットの天王星が双子のサインを運行していて、出生の射手の太陽、水星、月を真向かいから刺激しています。天王星は自立や自由を獲得するのにふさわしい天体。土星が射手サインを運行して、何らかの重圧や責任が圧し掛かってきています。まさに、自立と責任がセットになっている時。

ベートーヴェンはまだ幼いながら、自分の自由を得るとともに、それに伴う責任を感じていたのかもしれません。ソーラーアークの太陽は山羊に入り、出生の木星に接近しようとしているところ。自分自身の光を外に出そうとする意欲も感じられますし、山羊と言う社会的な場で評価されようとする意志もあります。幼いながらに社会と関わりつつ、サポートや庇護も受けられることが読み取れます。

16歳 モーツァルトに会う、母の死

ベートーヴェンの人生は、喜びが訪れるとショックなことが起きる様な起伏の激しい人生です。ウィーンへの旅行でも、憧れてやまないモーツァルトに初めて会え、そこで自分の即興音楽を披露して、モーツァルトにも絶賛され心が浮き立っている中、母危篤の知らせが入ります。ベートーヴェンと母親の記録自体はあまりないようですが、彼は母親のことが大好きだったようです。

この時期、山羊サインを運行中のドラゴンヘッドが出生の木星を通過しています。幸運な出会いがあることがわかります。射手のサインの多いベートーヴェンにとって、その支配星である木星は、自分の発展や成功を得るのに重要な惑星でもあります。

母親が亡くなった頃は、獅子の出生土星の真向かいを冥王星がトランシット。さらに、蟹サインを運行中のキロンは、出生木星とオポジションを形成。運行キロンとソーラーアークの火星、運行冥王星と出生土星など痛みを伴う惑星がぴったりの度数でアスペクトを形成していました。痛みや苦しみを伴う配置です。

21歳 ウィーンへ、そして父の死

1792年と言うのは、ベートーヴェンにとって大きな変化の年です。ハイドンと言う当時の有名な音楽家にベートーヴェンのカンタータを高く評価され、その後には生まれ育った土地を離れることを決め、1792年7月にウィーンに旅立ちます。このウィーンへの旅行はフランス革命の影響で社会情勢的にも緊張感と不安定な時期であり、そんな中に旅の一行がヘッセン軍に遭遇しその中を突っ切ると言うような緊迫する出来事もありました。

そして、ウィーンに到着して一月後の自身の誕生日の翌日に父親が急死してしまいます。ベートーヴェンは故郷には戻らず、弟が事を取り仕切ったようです。ベートーヴェンはその後、死ぬまで故郷の土地を踏むことはありませんでした。

これらのことが、7月から12月までの半年の間に起きています。一体、惑星達はどんな動きをしていたのでしょう。

まず、この年は、ソーラーアークの太陽が出生の冥王星に到達しています。これだけで、自己の大きな変容、アイデンティティをひっくり返すような変化、と言うことが読み取れます。これは、部分的な変化ではなく、環境ごと人生がガラッと変わると言う大きな変化に対して、精神的にも大きく意識が変わった年と言えるでしょう。外部から突然やってくることでなく、以前から自分自身の内側でずっと感じていた心の動きであったことでしょう。

ヘッセン軍を通り抜けた頃は、トランシットの冥王星が出生火星に対しトラインを形成。冥王星と火星の組み合わせは、危険で物騒な組み合わせですが、トラインと言うことから冥王星からは行動の後押し、危機回避を受けられたのかもしれません。

ちょうどウィーンに着いた頃は、運行のキロンとドラゴンヘッドが、出生水星-火星のオポジションに対して、Tスクエアを形成。ドラゴンヘッド単体やキロン単体ではコンジャンクション以外のアスペクトはあまり読みませんが、他の惑星との関わりと見たりします。また、両親問題やトラウマ的な問題などで良く表していることがあります。普段見えない問題、ある時に表出する問題などは、キロンが指し示していることが多くあります。

ベートヴェンにとって、ウィーンへの到着はたくさんの精神的な糧、出会い、痛み、癒しなどをもたらしたのでしょう。

「棍棒で兵士になぐられるかもしれない危険をおかして、駆者の奴が軍隊のまっただ中に[馬車を]突っ張らせたので」、チップして飲み代を一ターラー支出したと記入されている。まさに波乱の旅立ちだった。

ベートーヴェンの生涯/青木やよひ

25歳 難聴の始まり

ベートヴェンと言えば、耳が聞こえなかったということでも有名なのではないでしょうか。晩年、第九の初演の時には自ら指揮を振るったのですが、演奏が終わった後、客席からの反応がわからずにいたら、ソリストの一人がベートヴェンを振り向かせたことで、観客が拍手喝采していることを知った、と言うエピソードはとても有名ですね。

2000年になってベートヴェンの髪の毛を調べたら、基準値を大幅に超える鉛が算出されたそうです。その当時から工業廃水にて鉛を排出していた川で取れた貝が好きだったからなど研究がされているようですが、どこから鉛を体内に取り入れたのかは良くわかっていません。鉛の影響が強くあったことは確かなようです。

鉛と言えば占星術では土星です。出生土星は獅子に置かれていて、射手の太陽、水星、月にトラインを形成しています。この配置は、真面目さや堅実さや責任感を与え、良い師を得られる運などもありますが、単純に土星的なことの影響を受けやすいとも言えます。射手の惑星達に対しては、出生海王星からのスクエアもかかっていて、月に対してもスクエアを取っています。月は、その人の肉体も示し、揺れやすい射手の月に対して、真逆の性質の土星、そして、さらに不安定や原因不明などを与える海王星の力によって、肉体面も不安定に揺れ動きます。

耳鳴りや難聴を自覚し始めた頃は、トランシットのキロンが射手のサインを運行し、出生月や水星を刺激していました。トランシットの土星も出生の金星(感覚器官)とオポジション。普通はこのトランシットだけでは、長年の病気となることはありませんが、ベートーヴェンにとっては、弱いところにプレッシャーがかかったのかもしれません。さらに、ソーラーアークの冥王星が出生土星のオポジション、ソーラーアークの海王星が出生キロンとオポジションとなるなど、刺激の強い時期でした。

31歳 遺言書と作品作り

遺言書

1802年の夏から秋にかけて、ベートーヴェンは弟達宛の遺言書を書いています。内容は、自分にとって難聴がいかに辛いものであるか語っているとのことです。自殺の誘惑にもかられたが、自分自身の使命を自覚し思いとどまったと記述されているそうです。

これは遺言書と言うより、一種の意志表明の様な形になっています。ここにベートーヴェンの強い意志を感じられ、また使命に対して熱い思いを持っていることがわかります。

苦しみから死を考え、そこから自分自身の使命を思い出し、生を全うすることに舵を切っていく、ベートーヴェンの音楽にはその様なことが根底に流れているのかもしれません。だからこそ、大衆の人々の心を打つのでしょう。ただ美しさや綺麗さだけを追い求めているのでなく、大衆の苦しみとして理解し、そこから希望を見出す姿勢は、晩年に完成させる第九にも通じるところがあります。

さて、遺書や死と言うと、冥王星、蠍サインからの天体の影響、8ハウスや4ハウスなどにも関連があるのですが、ハウスはわからないので、ここでは惑星のアスペクトを確認してみます。

まず、蠍サインを運行中の海王星が、出生山羊金星にセクスタイルしています。海王星はソーラーアークの太陽水星月にもセクスタイル。この表示自体は実際の死を意味する強さはありません。死を幻想として捉えて心の内を表現することで、苦悩があったとしてもそれに打ち勝つ生の力を呼び起こしたのかもしれません。

ケイローンとベートヴェン

さらに、運行中のキロンがソーラーアークの太陽水星月を通過しています。このキロンの運行による神話的なことが強く表されています。

キロンはたくさんの象徴が含まれますが、その中に医者であり芸術にも秀でたケイローンはヘラクレスの毒矢を受け、それを治癒することは出来ず、苦しみながらも、死ぬことが出来ないと言う話があります。耐え難い難聴の苦しみを抱えているベートヴェンとケイローンの姿が重なります。

作品への意欲

ソーラーアークの太陽が出生金星とコンジャンクション生きること、この世の喜びなども感じる配置。実際この年には、三曲のヴァイオリンソナタ、三つのピアノソナタ、二つのピアノ変奏曲を完成させています。苦しみの中でなんと精力的な活動かと思います。

また、前年に作曲された「ピアノ・ソナタ第十五番<田園>」が出版されたとのこと。ソーラーアークの太陽と金星はこれに一番ふさわしいかもしれません。田園は、多くの人が、入学式とか式典などで良く耳にする音楽。タイトルでピンと来なくても、ちょっとネットで検索して聴いてみるとすぐに耳に覚えのある曲だとわかるのではないでしょうか。

40歳 転換期

不滅の恋人への手紙

40歳になる年、ベートヴェンはある女性との未来を考えていたのでは、と言う説があります。そして、それは1812年に突如終わりを迎えてしまったのではないかとのことです。

1812年はベートヴェンにとって人生の転換期と記されています。2月にはペシュトの新劇場の杮落しが大成功し、第七番の完成、第八番の完成、第九の旋律さえ登場させています。そして、6月になると、「不滅の恋人への手紙」を書いています。「これほど愛しているのに」「どうか冷静でいてください」など切迫した内容です。これはベートヴェンの死後に見つかった手紙だそうで、誰宛の手紙なのか物凄く論争を巻き起こしました。現在は「アントーニア・ブレンターノ」であるとされています。

それほどの思いを綴った相手と関係を絶たざるを得なくなった後に、第七番や第八番の完成をさせているのです。

この時期のチャートを見ると、ぱっと目に付くのは土星の運行。土星は、出生木星を通過し、社会的な地位を固めようとするきっかけを得る時です。山羊サインで起きていて、年齢的にも確固たる地位を築けるという時でしょう。

一方、魚を運行している冥王星は、射手の月や水星にスクエアを投げかけています。プライベートでは波乱万丈な様子がうかがえます。別れや喪失、挫折などが象徴されています。

さらに、射手サインを運行中の海王星が、射手月を通過。海王星は夢の様な恍惚感でもあり、その膨らんだ理想のしゃぼん玉が割れるように喪失や失望を伴うことがあります。海王星が見せる夢はあまりに現実と区別が付かないほど細部まで完璧なものですが、徐々に現実との差が生じてきます。理想にしがみついた後は、心の中が空っぽになるような体験を引き起こします。

この冥王星からのスクエアと海王星とのコンジャンクションによって、強烈な喪失体験が想像でき、それは愛した女性との別れを想像させます。

憧れのゲーテ

一方、7月には憧れのゲートと会うことが出来ると言う、ベートヴェンにとってご褒美のような素晴らしい時間を過ごしています。

蠍を運行中の天王星は、出生のドラゴンヘッドを通過しています。新しい出会い、人生に大きく影響する出会いがあります。人生に変革をもたらし、価値観を変えてくれるような人との出会い、ベートヴェンにとって、それはゲーテだったのでしょう。

44歳 甥カールを引き取る

1815年の11月に、ベートヴェンの弟が無くなります。この弟には9歳の子供がいましたが、ベートヴェンはその子供を引き取ることにしました。甥カールには母親がいましたが、ベートヴェンは裁判まで起こして、母親から親権を得ました。実際に母親は子供を養育するのに相応しくなかったのは確かだったようです。

ですが、9歳の子供にとって母親と引き裂かれたと言う気持ちは強いトラウマとなったのではないでしょうか。実際、この甥とベートヴェンはあまりうまく行きませんでした。ですが、ベートーヴェンの方はそれまで家族がいなかったのもあり、この甥を溺愛しました。

この時期、冥王星は射手の月、水星、太陽にスクエア。海王星も射手を運行しながら、出生月や水星を刺激しています。さらにドラゴンテイルが射手を運行しています。愛が執着になるタイミングであるのが良くわかる気がします。

53歳 第九初演

日本でも年末になると各地でコンサートが開かれています。プロでなくても、参加できるコンサートも各地で催されていて、第九を歌ったことある人も多くいます。第九は、第四楽章からなっていて、第一楽章から第三楽章まではオーケストラ、第四楽章で人の声とオーケストラが合わさり、歓喜へと盛り上がっていきます。ベートヴェンがこれでもない、あれでもないと模索し、最後にこれだ!と確信を得たのは、人の声が入ってこそ歓びなのだ!と言う熱い想い、たくさんの人々へと熱波のごとく伝わって、多くの人々に影響を与えている第九です。

第九の初演の時、ベートヴェンの耳はほぼ聞こえなくなっていたのにも関わらず、指揮はベートヴェンが振ったそうです。観客はものすごく盛り上がり拍手喝采だったのにも関わらず、ベートヴェンにはその拍手が聞こえず、演奏は失敗だと思い込んでいたいたところ、ソリストの一人がベートヴェンを振り向かせ、初めて観客が盛り上がっているのを知りました。

これはベートーヴェンにとって嬉しい反面、ずっと隠していた難聴のことを大勢の前で知られることになり、屈辱的な思いも少なからず抱いたようです。

この時のホロスコープでは、山羊の冥王星の上に天王星、ドラゴンヘッド、海王星がやってきていて、出生の冥王星・天王星・海王星のグランドトラインに大きなエネルギーが流れています。時代が後押ししたような強いエネルギーです。

さらに、運行の冥王星は、出生木星に対してスクエア。緊張と困難のアスペクトですが、発展や成功の爆発的な力ともなっています。運行の土星はドラゴンテイルと重なり、カルマ的な役割の完成や清算が終わったことを示しているようです。

長い病床生活からの死

大成功を収めたベートヴェンですが、翌年には体は不調となり、翌々年には甥カールがピストルによる自殺未遂を引き起こします。一命を取りとめた甥を連れて、秋にもう一人の弟ヨーハンのところへ滞在しに行くのですが、気に食わないことが起き、そこから甥を連れて立ち去ってしまいます。冬の無理な移動がたたり、その後長い病床生活に入り、1827年3月に亡くなってしまいます。

ベートヴェンが亡くなる午後4時~5時の間に、激しい雷鳴と雪とあられになったそうです。最後に第九を奏でて行ったのでしょうか。天からの熱烈な音楽でのお迎えだったようです。

この時のホロスコープでは、運行太陽と運行冥王星がコンジャンクションし、月は新月に向かっている時です。これだけでも暗示的な配置となっています。出生チャートに関して言うと、出生の山羊金星に天王星が重なり、出生山羊冥王星に海王星が重なってグランドトラインが活性化しています。ベートーヴェンの人生を象徴するようななかなかの強烈な星まわりでした。

ベートーヴェンは短い一生ですが、とても濃い時間を過ごしていて、後世まで人々を魅了する音楽を残しているので、もしかしてとても長い時間を生きたのかもしれません。

まだまだ書き足りないことがあるので、興味ある作品の時期などをピックアップしてこの記事に追記していくかもしれません。

ベートヴェンの性格

最後にベートヴェンの性格や資質などを書き出してみます。出生チャートを見ながら想像してみるのも楽しいかと思います。

  • 幼少期から楽譜通りの型にはまった演奏を繰り返して練習するより、即興的に自由に音を奏でるのが好き。
  • 父親からは殴られる、地下牢に閉じ込められるなど、かなりの厳しい躾を受けていた。
  • 9歳の頃には、ピアノ、弦楽器、ホルンを習得して人に教えられるほどの天才ぶり。
  • 子供の頃、一人即興音楽に没頭していた。
  • 素晴らしい師や友人達に恵まれる。
  • 読書好き。哲学書や詩が好き。
  • 社会慣習から外れてしまうことをあまり気にしない。
  • 自由人。
  • 直情的な一面。悪いと思ったらすぐに謝罪。
  • 傷付きやすい一面。
  • 自然が大好き
  • 甥に対する執着心。
  • 優れた音楽を次々に生み出す(当時は賛否両論、物議を醸しだす)。
  • 難聴。

参考図書

ベートーヴェンの生涯/青木やよひ

Beethoven ベートーヴェン / 交響曲全集 ジョルジュ・ジョルジェスク&エネスコ・フィル(1961~62年ステレオ)(5CD) 【Hi Quality CD】

ベートーヴェン:《悲愴》《月光》《熱情》 [ 辻井伸行 ]

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