古典占星術からモダン占星術、そして心理占星術

占星術は国家のものだった

心理占星術を語るのに、ノエル・ティル氏は欠かせないと言って良いでしょう。それまでの吉凶ではなく、個人個人のホロスコープに光を当て、ハードアスペクトや凶星と言われる惑星にも、本質に戻りその意味を捉えなおしていったと言えます。

占星術の歴史はとても長いのですが、個人の性格や未来を占う様になったのは、その歴史からみると割と新しいことです。占星術はもともとは国家や王国の為のもので、その存続や繁栄や戦争の勝利などを占うものでした。

一般の人々が占星術の恩恵を得ることが出来るようになって、占星家に相談したとしても、失せ物、恋人とのこと、夫婦関係、職探し、旅の安全などであり、それらはバースデーチャートから鑑定するのではなく、相談に来た日時を利用するホラリーによる占断が主でした。

昔は自分の誕生日を明確に知っている人自体もそれほど多くなく、まして自分が生まれた時刻なんて気にも留めませんでしたし、誕生日でさえ知らない人も多かった為、バースデーチャートを読み解くことなんて、王族や貴族など地位の高い人々くらいだったのです。

その様な事情の為、その国家や王国の存亡の為に発展した占星術を、そのまま個人の性格や人生で起きること、運勢に適用すると無理が生じてきます。大きなことに対する占断は、個人にはそのまま適用出来ないのです。それは、大きな船が右方向に舵を切るのと小さな船とは、大きく違うように、国家や王家の吉凶判断をそのまま個人に当てはめると無理が生じてしまいます。

モダンな占星術が生まれてさえも、スクエアやオポジションは不運と言う言葉が使われていました。その様な占断にしてしまうと、個人の可能性が閉ざされることになるし、逆に吉と言われるトラインを持つ人にとっても、個人の持つ悩みや心のうちまで触れられることはなかったでしょう。ノエル・ティル氏はそれらを一度組み換えて、心理占星術として世に出してくれた功績が大きいと言えるでしょう。

心理学の発達

また時代的にも、19世紀後半から心理学と言う学問が発達することにより、人の心は多様な動きをしていることが理解されるようになりました。無意識が発見され、人の言動は必ずしも、その人の心とは一致していないこともあることが分かってきました。そして、何が幸せなのかについても、答えは一つではなくなりました。ここに個人の自由意思が徐々にフォーカスを帯びてきたことが見て取れます。

何かが発展すると、それに従って占星術も発展していきます。占星術の世界ではこの世にあるものは、全て惑星の象徴として捉えることが出来る、と言う前提を持っているから、どの分野にも惑星やサインを関連付けることが出来ます。心理学の発達に従って、占星術も吉凶で物事を捉えることから前進する必要があり、再構築していく必要性にも迫られていたと言えるでしょう。

心理占星術と言う分野では、個人のホロスコープに描かれていることは、その人の持っている可能性や潜在能力と言われるようになり、決められた運命ではなくなりました。そうやって、個人個人に光を当てることが出来たのです。

緊張が人を成長させる

ノエル・ティル氏の心理占星術では、緊張が人を成長させるとよく言われます。

緊張が私たちをいずれかの場所へと導くのです。

ノエル・ディル/心理占星術コンサルテーションの世界

私たちは、いつも穏やかで平和で安定した世界を求め、それが続くことが幸せだと思いがちですが、緊張によって導かれることによって、そのプロセスを体験出来、成長をすることが出来、そうやって到達する場所こそ自分自身が輝く場所と言え、そのプロセス全体を幸せと捉えることも出来ます。

緊張自体を受け入れ、うまく人生に取り入れていくことによって、人生の筋力が鍛え上げられ、望みの場所にも行くことが出来るでしょう。ここで言う緊張とは、ワクワクドキドキする様な感覚の時もありますが、苦しみや不安や怖れと言ったことで表現されることであるかもしれません。

人は緊張を避けることは出来ません。たとえ穏やかで安定した世界にいたとしても、何れその状態への執着が生まれることから、変化を恐れる心理が生まれ、ここで緊張が生じてしまいます。例え、穏やかで安定でいても、結局は人は緊張を生み出すようになっているのです。

穏やかで平和で安定した世界を維持し続ける為には、日々の鍛錬が必要だったり、外界との緊張の接触することが必要になったり、自分自身でうまく緊張を取り入れていくことが必要です。この世は、あくまでバランスで成り立っています。そのバランスをどの様に取るかを、宇宙はその人自身に任されていると言っても良いでしょう。

次は、心理占星術の醍醐味である、半球の強調について説明していきたいと思います。

参考書籍

心理占星術コンサルテーションの世界/ノエル・ティル

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