土星の心理占星学

土星は肉眼で見える惑星の中で一番外側にある惑星です。目に見える領域と見えない領域の門番の役割のようなところにあります。社会的に合意が取れている、集団で認知されている領域を扱うのが土星です。ここから外のエリアは、個々の人では気付いてはいても、まだ集団的には認知されていないことがテーマと言えるでしょう。

もともと世界は混沌としている場所です。あらゆるものが人の理解を超えるものの積み重ねによって出来ています。神様の目から見たらそれはありのままの宇宙の秩序の中にあるのかもしれませんが、人間による理解はそこまで到底及ばないのです。人はその混沌の状態の中で生きていくのにはあまりに弱い生き物です。その為、種として生きながらえる為に、その地域、場所、分野などにおいて、互いに合意できる一定のレベルを設定し、人の秩序というものを長い時間をかけて作り上げていきます。

伝統的な占星術では、土星は凶星であり、妨害、不作、失敗、絶望などを意味します。近代になり、占星術が心理的に解釈されるようになってから、個人の精神的な成長を促す意味としての役割を持つようになりました。

土星は限界、境界、秩序、義務、管理、制限、支配、責任などであり、越えるべきカルマ、社会における役割、どのようなことに劣等感を抱くか、苦手意識を持つのはどこか、どのようにそれらを捉えていくことで成長できるか、どのような時に自制心を持つのか、と言う様なことも教えてくれます。土星をうまく生かすことで、その人の人生の骨組みや生きる為に必要な指針などをも得ることが出来ます。

個人のホロスコープの中で土星のある分野においては、不全感、劣等感、不安、恐怖などを持ちます。すぐには出来ないところなので、失敗や恥と言う感覚を持ちやすいところです。自己実現が阻害されているように感じ、困難に直面しやすい領域ともなっているでしょう。同時に、個人の限界や制限が何かわかり認識と理解によって、その扉の向こうを開ける鍵を持っているのも土星です。

土星のエレメント毎の性質

エレメント毎の土星の性質をまとめてみました。私の言葉で書いてあるので、紹介している書籍と理解が違うこともあるかもしれません。

水のエレメント

家族や初期の養育環境において、感情の繋がりが持てずに、感情の表出がどこかぎこちなくなっているかもしれません。表現したくてもそれを抑圧や禁止させれた可能性があり、それは願望の欠如に繋がっていて、それが満たされない感覚をもたらしていることがあるでしょう。

家族や夫婦の関係などにおいて、世間一般的な義務や労働を与えているのに、妻が出ていく、子供が言うことを聞かない、それが何故か知りたいのにきちんと答えてくれる者はいないというように思っていたりします。日常の些細な一面で感情のやり取りが出来ないので、周囲はそれに虚しさを感じ、次第に諦め、最後には関りを避けるようになるのですが、それが理解出来ずにいます。

この閉ざされた感情経路のへの働きかけを大人になって再度丁寧に行うことで、新しい人生、変身と言うプロセスへ向かうことが出来るでしょう。自身の抑圧されている願望や欲求、感情にアクセスすることで、不器用だとしてもそれが少し表に出るだけで、周囲の人はあなたと交流できることを知るのです。心理の専門書、カウンセラーやセラピストと協力し合うことは役に立ちます。そうすることで、客観的な視点とともに自分の望みを理解し、その望みを現実世界に構築していくことが出来るようになるでしょう。

地のエレメント

物質的なこと、経済的なこと、社会性などにおいて、何らかのフラストレーションを抱えているかもしれません。人は大地に根付いて生きて、そこから栄養を取り入れ、その安全を五感で察知しようとしますが、土星が地のエレメントにあるとこれらがうまくはたらかないことがあります。

地のエレメントは、保持する力、手順化する能力、物事を秩序立てていく力、境界を明確にし責任を果たそうとする力、権威などに関連します。これらのテーマで初期の頃に、過度な厳しさや制限、強制などを受けている可能性があるでしょう。厳格な両親や祖父母の存在によって、様々なことが厳しく制限されていたかもしれません。その経験を通して、誰かの言いなりのままで生きようとするのか、もしくは、自分で管理すること、自ら権威を持とうとすることで、自由を得ようとするか、どちらかの人生の選択肢を迫られることになるでしょう。

地のエレメントは物質や権威や経済基盤と深く関りがあります。ここに土星があると、お金への妄信、支配することへの執着することで、何とか自分を保持しようとすることがあります。ですが、それは自分の精神や感情がおざなりにされてしまっていることになります。

この土星を持つ人にとって、本当に欲しい物を何なのかを掘り下げることは重要です。不安や空虚感から、手当たり次第に物を集めていたり、お金を出し惜しみしている時、本来の自信自身とどんどん隔たりが出来てしまい、空虚感は満たされないでしょう。土星は、物質や権力や名声を得る為の力となってくれますが、心や精神、霊的なことへの理解によって、芸術的な陶器が作り上げられる様な高い完成度をもたらすでしょう。

風のエレメント

コミュニケーション、対人関係、知的活動にフラストレーションを抱えやすいと言えるでしょう。本来の風の自由気ままが封じられやすくなり、人との交流に壁を感じるようになっているかもしれません。その為、孤独や孤立と言う問題を抱えやすいと言えるでしょう。

それほど深刻にならなくて良いことでも、深く熟考し、思慮深くあろうとします。そうやって常に自分自身の価値を深く掘り下げ自身に問うています。人との交流は、軽い話題のやり取りの連続が積み重なり、そこから徐々に信頼を築き上げ、そこから深い話が出来るようになるのですが、その最初の段階の軽いやり取りがなかなか出来ずに苦労していることがあります。何もかもを深刻に受け止めやすい為に、望む関係までに発展しづらく、孤独や孤立の問題と常に戦っている状態となっていると言えるでしょう。

この土星を持つ人は、知性を使う様な活動をしていくしかありません。コミュニケーションでも関係性の作り方でも、自分以外の文化ややり方を学ぶと言う意識を持つことで、孤独の問題に対処していくことが出来るでしょう。そして、自分自身の中の深淵な知性を、外に出す時に適切な言葉を使えるようになると、どのようなタイプの人とも交流できる自由を手に入れるでしょう。

火のエレメント

自己表現、直感に従うこと、人生への目的、などに対して隔たりがあるように感じてしまうことがあるかもしれません。生きている意味を失っている感覚、自信を喪失している様な感覚を覚えています。この喪失感を埋めようとして、自分を必要以上に大きく見せようとしたり、自分が重要であるかを周囲に示そうとするところがあります。

火のエレメントは、この時代の価値観に照らし合わすと、もっとも理解されにくいものとなっています。直感、スピリチュアルなこと、信念、情熱などは、教育からも脇に追いやられ、試験には出ません。さらに、この社会においては、すぐに物質化やデータ化されてしまう特質を持っています。一旦目に見えるものに変化をすることは、一度媒体を通すことになり、様々なフィルターがかかってしまいます。そうやって取り出されてから理解されたものは、本質は薄まり、限定された捉え方となってしまっています。この流れでは、火の直感や創造力や信念や人生の意味が無くても、そんなに問題が無いと言う誤解が生まれやすくなっています。その為、この位置に土星があるとその苦しみがより理解されにくいという面があるでしょう。

ですが、この火のエレメントは生命の本質です。ここに土星を持つ人は、直感や創造力などのエネルギーと自己を繋げていくことが重要です。その活動自体が、生きることそのものになるでしょう。時間をかけて、自分を取り戻していく活動をし続け、創作活動、直感力を育て、社会における自分の役割などを通して、すぐに消えることのない自己を創り上げていくことになるでしょう。

参考書籍

サターン 土星の心理占星学/リズ・グリーン

リズ・グリーンによる『サターン 土星の心理占星学』では、土星について深い洞察が得られる本です。土星と他の惑星とのアスペクトについて記述もあります。ただ、文章は難解です。自分のところを読んで、当てはまるところだけ参考にすると良いでしょう。

その人が本当に悩んでいたり、深い劣等感に苛まれていたり、否定的な感情に悩まされている場合、この本を手に取るとその劣等感や不全感を持っていても良かったんだと思えるかもしれません。

人が落ち込みから回復するには、いちどそれを客観的に見つめ理解することが助けになります。自分はそれが苦手であり、そうであって仕方なかったと言うことを認める時、次への行動や理解が生まれます。自分だけではない、同じような人がいる、そう思えることで、それまでの落ち込ませていた力を、それ以外の力への適用へと変化させtくれます。

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